弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

判断能力の衰えから生じる危険回避の制度

  〜法定後見制度その5    法定後見人等の職務と権限B

     中小企業法務研究会  後見事業部会  弁護士  平岡  健太郎 (2014.08)

前稿に引き続き成年後見人の財産管理に関する具体的職務のお話の続きです。

  • C  確定申告関係

    本人に賃料収入等がある場合や年金収入のみでも源泉徴収されている場合で還付が見込まれる場合等,成年後見人において確定申告を行うべき場合があります。
       申告にあたって専門的知識を要するような場合には,申告業務を税理士に委任することもでき,この場合の税理士に支払う報酬等は原則として後見事務費用として認められます。
       また、確定申告によって還付金が生じる場合の入金口座は、成年後見人名義の口座を指定することが可能です。振替納税を行う場合の振替口座も成年後見人名義の口座を指定することが可能です。

  • D  特別障害者控除の適用の検討

    所得税法第2条第1項第29号及び同法施行令第10条第2項第1号の規定によると「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は「特別障害者」であるとされており、居住者又は控除対象配偶者もしくは扶養親族がこの特別障害者に該当する場合には一定額の特別障害者控除が認められています。
       民法第7条が規定する後見開始の審判の要件も、本人が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当することですので、後見が開始した場合は、本人について所得税法上の特別障害者にも該当する可能性が高いといえますから、成年後見人としては、特別障害者控除の適用があるかどうかを検討すべきであると思われます。
       なお、後見が開始した場合の本人が特別障害者控除の対象となるかどうかについては、従前は見解が対立していましたが、国税庁がこれを認める見解を出したことで現在では一応の解決を見ています。

  • E  不動産関係

    本人が不動産を所有している場合は、成年後見人が管理を行わなければなりません。所有不動産が賃貸物件である場合は、賃料回収等の業務を行わなければなりません。また、土地を所有している場合に、その土地に生える雑草や発生する害虫の対策等、金銭的な管理以外の業務が必要となることもあります。
       不動産の処分については、本人の居住用不動産である場合は家庭裁判所の許可が必要となりますが、それ以外の場合は原則として成年後見人が必要に応じて処分することができます。但し、その不動産の処分が「本人のため」になるものであるかどうかの検討は慎重に行わなければなりません。

次回も引き続き、成年後見人の財産管理に関する具体的職務のお話をさせていただく予定です。