弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

判断能力の衰えから生じる危険回避の制度

  〜法定後見制度その7    法定後見人等の職務と権限D

     中小企業法務研究会  後見事業部会  弁護士  平岡  健太郎 (2014.12)

今回は、財産管理の例外的位置付けとなる本人による日用品の購入その他日常生活に関する行為と身上監護業務についてお話させていただきます。

  • G  日用品の購入その他日常生活に関する行為

    成年後見人には、本人の行為についての取消権が与えられていますが、日用品の購入その他日常生活に関する本人の行為については、取り消すことができません。
       これは本人の自己決定の尊重等の理念に基づくものであると同時に、日用品購入等の相手方を保護するという考え方に基づくものです。
       この行為に該当するものの例としては、食料品、日用品、被服等の購入や光熱費の支払いなどが挙げられます。
       これらの支払に充てるための現金は、あらかじめ金額を決めて成年後見人等から本人に渡しておく方法や、支払いが必要になる都度本人に手渡しまたは送金するなどの方法もあります。本人自らが金融機関口座からの引き出しを行うことが可能であれば、成年後見人等の事務負担の軽減にもなりますので、専用の少額の口座を設けて本人に渡しておくこともあります。
       なお、この点については、社会福祉協議会等が行っている日常生活自立支援事業を利用する方法もあります。これは、社会福祉協議会等が、日用品の購入等日常生活に必要な現金を本人に届けて下さるというもので、大阪市ではこの事業を「あんしんサポート」と呼んでいます。この日常生活自立支援事業については、機会を改めてもう少し詳しくお話させていただく予定です。
       財産管理業務に関するお話はこれで終了となります。

  • ○  身上監護業務について

    さて、ここからは成年後見人のもう一つの業務である身上監護業務についてお話させていただきます。
       以前お話させていただきましたように、成年後見人の業務は財産そのものに関するものだけではなく、身上監護に関するものも含まれています。もっとも、身上監護と言いましても、あくまでも成年後見人が行う事務は契約や債務の弁済等法律行為に関するものですから、現実の介護行為や現実の療養看護等までは当然には含まれません。
       身上監護の具体的な業務事項につきましては、次回、具体的にお話させていただきますが、これらの業務の一環として費用の支払いが生じる場面が少なくありません。その意味では身上監護も財産管理と関連を有しているといえ、これらを完全に区別することはできません。

次回は、身上監護の具体的な業務事項の紹介と個別の業務ごとに若干の解説をさせていただく予定です。