弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

判断能力の衰えから生じる危険回避の制度

 〜法定後見制度その1 法定後見制度の類型と申立手続

  中小企業法務研究会 後見事業部会 弁護士 平岡 健太郎 (2014.03)

前稿に引き続き、本稿からは、認知症などにより判断能力が不十分になった場合に利用できる制度のうち、法定後見制度についてご紹介させていただきます。

● 法定後見制度の目的

 法定後見制度が設けられた目的は、判断能力が不十分になった方の権利・利益を保護するとともに、その方の自己決定を尊重し、現有の能力を活用していくことにあります。法定後見制度が利用される局面としては、判断能力が不十分になった方の財産管理の必要性が生じた場合が多いのですが、単にそれだけのための制度ではないことには注意しておく必要があります。

● 法定後見制度の類型

民法で規定されている法定後見制度の類型は、「後見」「保佐」「補助」の3類型です。いずれも精神上の障害によって判断能力(事理弁識能力)が低下した場合が対象となります。改正前の民法では「浪費者」も対象とされていましたが、現在では除外されています。
 「後見」は判断能力を欠く常況にある方を、「保佐」は判断能力が著しく不十分である方を、「補助」は判断能力が不十分な方をそれぞれ対象としています。おおむね、日常的な買い物も自分で行うことが難しい場合であれば「後見」を、日常的な買い物は単独でできるものの重要な財産に関する行為は自分ではできない場合であれば「保佐」を、重要な財産に関する行為も一応は自分でできると思われるものの、できるかどうかに危惧があり、本人の利 益のためには誰かに代わってやってもらった方が良いと思われる場合であれば「補助」を選択することになると思われます。
 家庭裁判所の審判により、これら法定後見制度の開始が認められますと、「後見」の場合は「成年後見人」が、「保佐」の場合は「保佐人」が、「補助」の場合は「補助人」がそれぞれ選任され、これら選任される方を「後見人等」と呼んでいます。

● 法定後見制度利用の手続

法定後見制度を利用するためには家庭裁判所に対する申立てが必要となります。裁判所の管轄は、判断能力が不十分になった方の住所地です。
 申立てができる人は、判断能力が不十分になった方本人のほか、その配偶者、4親等内の親族、検察官、市町村長等です。
 申立てには、申立書のほか所定の診断書や本人と申立人の戸籍謄本等の書類が必要です(必要書類の詳細は裁判所のウェブサイトにも記載があります)。この診断書の記載によって先にお話した3類型を区別して申し立てることになりますが、診断書の作成は必ずしも精神科の医師が作成したものに限られず、かかりつけの医師等が作成したものでも差し支えありません。

次稿では申立手続の続きと、後見人等の選任の実情と職務についてお話いたします。