弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

税務訴訟に至るまでのステップ

  中小企業法務研究会 税務訴訟部会 弁護士 室田 朋宏 (2014.03)

第1 税務訴訟に至るまでのステップ

・税務訴訟に至るまでには次のようなステップを踏むことになります。

  1. 税務調査→否認(更正処分・決定処分)
  2. 異議申立て→異議決定
  3. 審査請求→裁決
  4. 税務訴訟の提起

第2 税務調査(国税通則法74条の2等、以下では「法」としています。)

・税務調査(任意調査)は次のような流れで行われます。

1 調査先の選定

2 事前通知(法74条の9)

 事前に調査官から、調査先と調査先の税理士に連絡があります。大きな不正が見込まれる場合は無予告調査が行われることもあります(法74条の10)。 
 なお、税理士法第33条の2に規定する計算事項等を記載した書面を税理士が作成し、当該書面を申告書に添付して提出した場合、事前通知の前に、税務代理を行う税理士又は税理士法人に対して添付された書面の記載事項について意見を述べる機会を与えなければならないこととされています(税理士法第35条第1項)。

3 調査日当日

(1)身分証明書の提示

 税務調査のため、調査担当者が事務所や事業所等に伺う際には、身分証明書と質問検査章を携行し、これらを提示して自らの身分と氏名を明らかにする。

(2)概況聴取

 1日目の午前中、長い時は1日かけて聴取することもあります。

(3)帳簿調査

4 反面調査

 この調査は税務調査の対象となっている調査先と取引している得意先や支払先、あるいは銀行などに対して行う調査で、調査先が計上している金額の正確性を相手側から調査するものです。反面調査のうち特に銀行に行く反面調査のことを銀行調査と呼びます。

5 修正申告等の勧奨

 税務調査において、申告内容に誤りが認められた場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、調査結果の内容(誤りの内容、金額、理由)を説明し、修正申告や期限後申告(以下「修正申告等」といいます。)を勧奨する。

6 修正申告(法19条)

7 更正処分(法24条)、決定処分(法25条)

 修正申告等の勧奨に応じない場合には、税務署長が更正又は決定の処分を行い、更正又は決定の通知書を送ることになります。
 なお、税務署長が更正又は決定の処分を行うことができるのは、原則として法定申告期限から5年間です(法70条1項)。 ただし、偽りや不正の行為により全部若しくは一部の税額を免れ、又は還付を受けた場合には、税務署長は法定申告期限から7年間、更正又は決定の処分を行うことができます(法70条4項)。

第3 異議申立、審査請求、訴訟

(1)異議申立て

 税務署長等が行った処分に不服があるときには、処分の通知を受けた日の翌日から2か月以内に、税務署長等に対して異議申立てをすることができます(法75条1項、77条項)。申立書を提出してから異議決定が出るまで一般的には約3か月かかるといわれています。
 なお、青色申告書に係る更正処分に不服があるときなどは、異議申立てをせずに、直接、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる制度もあります(法75条4項1号)。これを「直進」といいます。また、異議申立てから3か月を経過しても異議決定がない場合には、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます(法75条5項)。

(2)審査請求

 税務署長等の異議決定を経た後の処分に、なお不服が あるときには、異議決定の通知を受けた日の翌日から1か月以内に、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます(法75条3項)。なお、審査請求をしてから、裁決が出るまで一般的には約1年かかるといわれています。審査請求から3か月を経過しても裁決がない場合には、裁判所に訴訟を提起することができます(法115条1項1号)。

(3)訴訟

 取消訴訟を提起する場合、いきなり訴訟提起することができず、不服申し立ての手続きを取らなくてはなりません。これを不服申立前置主義といいます。税務訴訟の場合は、異議申立と不服審査申立を行わないといけないことになっています(法115条1項)。国税不服審判所長の裁決があった後の処分に、なお不服があるときには、その裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内に、裁判所に訴訟を提起することができます(行政事件訴訟法14条1項)。