債権回収を考える
1 内容証明の内容?
債権回収部会  弁護士  吉開  雅宏(2014.03)
1 はじめに
上記《事例》に関わらず、債権回収の行き着く先は、訴訟→強制執行です。しかし、訴訟となれば、時間と費用がかかります。また、相手方との交渉等による精神的負担も覚悟する必要がある上、法的な知識が必要となってくることは言うまでもありません。
この研究会では、上記のような《事例》を通して、債権回収の方法とそれにおける弁護士の役割を検討し、債権回収における弁護士のサービス向上を図っていくことを目的としています。本稿では、内容証明郵便による請求を考えてみます。
2 内容証明郵便
内容証明郵便とは、郵便事業株式会社が、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰に差し出されたかということを証明する郵便です。ちなみに、内容だけでは、相手方に到達したことは証明されませんので、内容証明郵便を出すときは、配達証明も依頼するのが一般的です。
もっとも、相手方が支払ってくれないからといって内容証明郵便を用いて強制執行をすることはできません(民事執行法22条参照)。
ただし、上記《事例》で、A社のB社に対する債権が、あと数日で消滅時効が完成してしまうという場合に、A社は、内容証明郵便でB社に催告をしておけば、その後6ヶ月以内に、訴えの提起、和解の申立て、仮差押えなどの時効中断事由となる法的手続きを行えば良いことになっています(民法153条)。
そして、内容証明郵便は、送付者の証拠となるだけではなく、受領者にとっても証拠になるということを忘れないで下さい。債権回収に躍起となり、その内容が恐喝・脅迫に及ぶようなものになってしまうと、最悪の場合、刑事責任を問われる可能性があるからです(刑法222条、同249条参照)。内容証明郵便を出すときは、その内容に注意するべきです。
3 内容証明郵便と弁護士
内容証明郵便は、相手方に対する威嚇的効果が期待でき、弁護士以外の方でもその事実上の効果を享受できます。そうすると、内容証明郵便を送るのに、高い費用を払ってまで弁護士に依頼する必要性はないと思うかもしれません。
しかし、弁護士名義で内容証明郵便を出せば、法的効果が生じるというわけではありませんが、相手方に訴訟を提起されるのではないかと思わせることができ、その威嚇的効果は個人の名義で送るよりも増すものといえるでしょう。
そして、債権回収をしなければならないという段階に至っている場合、その債権には何らかの問題が生じている可能性があります。早い段階から債権回収に取り組まなければ、債務者の財産が流失してしまう恐れがあります。相想定し、次善の手方が応じなかった場合のことを策を考えておく必要があります。そのためにも、早期に専門家に相談し、どういった債権回収の方法があるのか客観的に判断してもらうことが債権回収の近道になるものと思われます。
4 最後に
本稿では、《事例》を検討するということはしませんでしたが、今後は、《事例》をとおして、企業経営の要ともいえる債権回収について、どのような法的方法があるかを検討していく次第 であります。