弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

異議申立て  審査請求

   〜 その2

     中小企業法務研究会  税務訴訟部会  弁護士  室田  朋宏 (2014.05)

審査請求について

1  審査請求の概要

異議申立てを行ったが、棄却された場合、さらに争うためには、審査請求を行う必要があります。 審査請求は国税不服審判所に対して行ないます。国税不服審判所は、処分を行った税務署や国税局等の執行機関とは別個独立した機関です。 審査請求をする場合は、異議申立の棄却決定から1カ月以内に、納税地を管轄する国税不服審判所に対して審査請求書を提出しなければなりません。 国税不服審判所では事件ごとに3人の審判官が選任され、合議体で事件を判断します。 国税不服審判所の本部は東京都千代田区霞が関にあります。その他12か所の支部(札幌、仙台、関東信越、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、熊本、沖縄)、7か所の支所(新潟、長野、横浜、静岡、京都、神戸、岡山)があります。 近畿地方でいうと納税地が大阪府、奈良県、和歌山県の場合は大阪国税不服審判所、納税地が京都府の場合は大阪国税不服審判所京都支所、兵庫県の場合は大阪国税不服審判所神戸支所が管轄することになります。 審査請求書は持参または郵送で提出することになります。

 
2  審査請求の取消率

審査請求の平成24年度の処理件数は3618件で、平成24年度の一部取消を含めた取消率は 12.5%となっています。また、1年以内に処理された件の割合は96.2%となっています。審査請求では、法的解釈を争うものや通達の規定を  争うものについては取消が認められにくいと言われています。しかし、個別の事実認定を争うものであれば、取消が認められることも十分可能と言われています。

3  裁決の種類
  • 却下裁決

    異議決定が出てから1カ月以上経過してから審査請求したなど不適法な審査請求であるときは却下裁決がなされます。

  • 棄却裁決

    適法な審査請求であっても、その審査請求に理由がないときは棄却裁決がなされます。

  • 取消裁決

    適法な審査請求で、其の審査請求に理由があると判断されたときは取消裁決がなされます。取消裁決には請求の全部を認容する全部取消し裁決と請求の一部が認容される一部取消し裁決があります。

4  裁決所の受領方法

国税不服審判所の裁決については「言い渡し」は義務付けられておらず、謄本を送達して行うものとされています。送達を行う日時については予め知らされることはなく、ある日突然裁決書が送られてきて結果を知るということになります。

5  審査請求の代理人

税務訴訟の代理人は、弁護士代理の原則があるため、弁護士しか行うことができません。しかし、異議申し立てや、審査請求の段階では弁護士だけでなく、税理士も代理人なることができます。最初から弁護士が代理人を行うケースもありますが、異議申立や審査請求の段階では税理士が代理人を行うケースも多いようです。