弁護士法人英明法律事務所の事務所報『Eimei Law News 』より、当事務所の所属弁護士によるコラムです。

就業規則

  1  労働基準法上作成が義務づけられている就業規則

    中小企業法務研究会  士業部会  労働部会  弁護士  木山 生都美(2015.04)

1    就業規則とは

就業規則とは、労働条件の統一的・集団的決定が不可欠となることから発展してきた職場のルールです。就業規則は、労働基準法上就業規則の作成が義務づけられている、使用者と労働者の間の労働条件に関する権利義務を発生させる、といった2つの観点があります。今回は、労働基準法上就業規則の作成が義務づけられていることについて、整理します。

2    就業規則作成義務

(1)常時10人以上の労働者を使用する事業場では、使用者は、就業規則を作成することが義務づけられています(労働基準法89条)。なお、この就業規則は、事業場毎に作成しなければならないと考えられています。

*「常時10人以上とは?」
  →正社員かどうかを問わない、パートアルバイトも含む、但し、派遣労働者は派遣先で、数に含まない。 一時的に10人未満になることがあっても、年間を通じて、常態として10人以上が働いていればよい。

(2)10人未満の事業場であっても、職場のルールは存在するわけですし、無用な紛争を防止するためにも、作成が望ましいと思われます。

3    就業規則の作成手順

就業規則を作成しよう!と思った場合、次の手順で作成します。

  (1)就業規則の案を作成(労働基準法89条)

・必要的記載事項を入れる必要がある。この点は後述。

  (2)意見を聴取(労働基準法90条)

・労働者の過半数で組織する労働組合がある場合その労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合労働者の過半数を代表する者の意見を聴取する。
・意見を参考にすればよいので、意見が反対でも、かまわない。ただ、反対意見については、よく検討し、就業規則に反映させるか、労働者に説明して理解を得るべき。

  (3)(2)の意見書を添付して労働基準監督署長へ届出(労働基準法90条、89条)

・事業場を管轄する労働基準監督署長宛。
・意見書は、代表する者の署名または記名押印が必要(労働基準法規則49条2項)

  (4)周知手続(労働基準法106条1項)

・常時各作業場の見やすい場所へ掲示、又は備え付け、書面を交付その他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知することが必要。
・磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する方法でもよい(労働基準法規則52条の2)。

4    就業規則の記載事項

以下の就業規則の記載事項のうち、(1)絶対的必要記載事項及び(2)相対的必要記載事項については、労働基準法89条により、使用者に就業規則化が義務づけられています。

  (1)絶対的必要記載事項=必ず就業規則で定めなければならない事項(労働基準法89条1〜3号)
  • 1号:始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、労働者を二組以上に分けて交替に就業させる交代制の場合の就業時転換に関する事項
  • 2号:賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 3号:退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  (2)相対的必要記載事項=使用者が制度を設けている場合には必ず記載しなければならない事項(労働基準法89条3号の2〜10号)
  • 3号の2:退職手当に関する事項
  • 4号: 臨時の賃金等・最低賃金額等に関する事項
  • 5号:労働者の負担となる食費、作業用品、社宅費等に関する事項
  • 6号:安全衛生に関する事項
  • 7号:職業訓練に関する事項
  • 8号:災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項